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単行本と店主 [その他]

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 先日のNHKスペシャル「魂の旋律 ~音を失った作曲家~」は凄まじいドキュメンタリーだった。耳の不自由な佐村河内守氏の、常に頭に鳴り響くノイズの中から必要な音階を探り出していく作業には身震いした。代表作の「交響曲第一番“HIROSHIMA”」も凄かったけれども、東日本大震災に対する「レクイエム」も耳に残る。安っぽい「愛」なんぞとは無縁で、ひたすら優しさの溢れる、久しぶりの本物を感じた次第。
 ちょうど、お客さんからお借りした「三陸海岸 大津波」という吉村昭氏の単行本を読み終えたタイミングであったのもあり強く惹き付けられた理由。この本は1970年が初版で、84年に一度文庫化、僕が読んだのは04年に新たに文庫で出版された分の11年の5月第11刷の発行分である。要するに3.11直後のものだ。しかし吉村氏の、足で記録を掘り起こして積み重ねて行くという、この地道な作業を自己表現に昇華してしまうのは、僕には佐村河内氏の音作りにも匹敵する作業に思える。明治29年、昭和8年、それとチリ地震による津波を軸に取材したものだが、非常に濃い内容で、何とも言えない動揺が体を襲い痺れとなって持続する程だ。その昔、僕がまだ幼いガキの頃、親父が絵に描いたように食卓をひっくり返していたのだけれど、幼い僕には「ひっくり返る」とか「裏返る」とかが異常に恐怖に感じていて、未だに若干のトラウマになっている程である。それとは比較の対象には全くならぬけれど、津波も僕には「ひっくり返って裏返る」ような感覚があってどうしようもなく恐怖だ。僕の住む大阪にも、かつて津波が押し寄せた。

 発行年が1970年というのも見逃せないが、どうもこの本、都心で中央に集うところの絶対に読まなければならぬ人達がほとんど読んではおらぬ気がしてしょうがない。とても大きな被害を受けた1896年、明治29年の大津波から115年後の東日本大震災だけどこの時間差に違和感を覚えてしまう。読み終えた後にやり切れなさと切なさが体を交錯するのは僕だけじゃないでしょうね、きっと。
仙台に住む友人の J ちゃんから聞いた話も忘れられないのですが・・。

ガロートは明日3日が定休日となっております。

 
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